感涙モノ

今から二十数年ほど前、高校生の頃、
友人から「これ聞いてみ。」と、1本のカセットテープをもらった。

中には、当時流行っていた歌謡曲が10曲程度入っていたのだが、
その中の一曲に、強く心を打たれた。

曲の名は、「否-NON-」。
歌っていたのは、佐藤隆というシンガーソングライター。
「12番街のキャロル」や「カルメン」といえば、
思い出される御仁も多いのではなかろうか。

それ以来、すっかり氏のファンとなった僕は、
レンタルレコードショップを何軒も回り、せっせとダビング(貧乏学生にはレコードを買う余裕がなかった)しては、
それこそテープがすり切れるまで、何度も何度も聴き、歌った。

そんな氏の公式HPを、さっき初めて訪れてみた。

コンテンツの中には、
氏のアルバムに収録されている曲の「デモ・テープ」がアップされており、
QuickTime形式で聴くことができるようになっている。

これだけ手軽に好みの音楽が手に入る時代になっても、
氏のアルバムはなかなか入手しづらく、
もう二度と聴くことなどできないと思っていたので、
こんな粋な計らいを見つけたからには、聴き入らずにはいられなかった。

なつかしい。あの声、あの曲調。

ニョーボにも、姫にも若にも分からない、
自分だけの世界というと大げさだろうか。

つかの間のタイムスリップを楽しんだ、
春の夜だった。